遠隔地にいる人やロボット,仮想空間のエージェントとのインタラクション

遠隔地間にいる人同士や,実世界にいる人と仮想空間にいるエージェントとのインタラクションにおいて,相手と同じ空間にいる感覚(同室感)を創出するインタフェースのデザインについて研究します.実際にシステムやロボットを設計・開発し,評価実験を通してその効果を検証していきます.

空間共有ロボティクス

離れた場所にいる人や仮想空間にいるエージェントと身体接触を行うことができれば,映像のみでの対話よりも同室感が強化されることが期待されます.そのような身体接触として握手を想定し,握手用ロボットハンドを開発しています.このロボットハンドは人の手のような温度,握力,肌の柔軟性を有しています.また,人の指の動きを取得するグローブを製作し,左の動画の通り人の手に同期した動きをロボットハンドで再現することが可能です.今後,より高い同室感を創出する上でさらにリアルな接触感覚を再現するにはどうすれば良いか,携帯デバイスに応用した場合の適切なデザインとは何か,人やエージェントとの同室感を創出する上で必要最小限のデザイン(ミニマルデザイン)とは何か等について研究します.

大阪ほんわかテレビ 読売テレビ, 2020年2月21日
このロボットハンドを使用し,VTuber(響木アオ)との握手会イベントを行いました.このイベントはクラウドファンディングとして株式会社ハローが企画し,ロボットハンドの開発を大阪大学中西研究室と共同で行いました.
このイベントについて,読売テレビ(左の動画)や集英社 ウルトラジャンプから取材を受けました.
このロボットハンドについて,大阪大学中西研究室に所属していた頃に様々なメディアから取材を受けました.


DigInfo TV, 2012年3月27日


スッキリ!! 日本テレビ, 2012年4月18日.


週末応援ナビ☆あほやねん!すきやねん! NHK総合, 2013年6月15日.

音楽による遠隔操作ロボットとの一体感の強化

遠隔操作ロボットは操作者と身体性が大きく異なる場合,ロボットの移動を自身の動きであると感じる身体的一体感やロボットと同じ空間にいるように感じる空間的一体感が得られにくいという問題があります.本研究では身体的・空間的一体感を強化するため,操作者が聴いている音楽に同期した自律動作(音楽同期動作)を操作者に提示する手法を提案しました.実験では,音楽を聴きながらロボットを遠隔操作する際に,音楽同期動作として音楽(120BPM)に合わせて動くロボットの耳を映像越しに提示しました.ロボットが音楽同期動作を提示する同期あり条件(左下の動画)と,提示しない同期なし条件(右下の動画)を比較した結果,身体性が大きく異なるロボットの遠隔操作であっても,音楽同期動作を提示すると身体的・空間的一体感を強化できることが示されました.また,音楽同期動作によってロボットに対する親近感を喚起することや,楽しさや操作意欲を向上させられることも分かりました.本研究は大阪大学石黒研究室との共同研究として実施しました.


同期あり条件


同期なし条件

人と同じように接してもらえるロボットやエージェントの設計

日常生活において,音声対話を通して人の生活をサポートするロボットやAIアシスタント等のエージェントが見られるようになりました.しかしながら,それらのエージェントに話しかけることに抵抗感があることが普及の妨げとなっています.この問題が生じるのは,エージェントの社会的存在感が低く,人と同じように接してもらえないことが原因であると考えられます.社会的存在感を強化する上で有効なエージェントのデザイン(外見や振る舞い等)や機能について,実験を通して検証していきます.

音楽的感情表現

現在の音声対話エージェントは平坦な合成音声のみで人と対話するものが多く,感情表現が乏しいことが人間らしさを低下させ,ものに話しかける抵抗感を生んでいる可能性があります.そこで本研究では,合成音声に他の聴覚情報を付与して感情を強調的に表現する強調的感情表現を提案しました.強調的感情表現としてBGM,SE,擬態語を合成音声に加えて印象評価を行った結果,平坦な合成音声であっても感情を意図通りに伝達することができました.さらに,感情的な合成音声に加えた場合でも,その感情伝達の効果を高めることができました.また,ポジティブな感情表現においてはBGMやSEを用いた場合,エージェントの人間らしさや話しかけやすさを向上させることができました.これらの効果において特にBGMによる強調的感情表現が最も顕著であったため,深層学習技術を応用して伝達すべき感情に応じたBGMを自動生成する研究にも取り組んでいます.本研究はTIS株式会社との共同研究として実施しました.



TANAKA Kazuaki; 2020-03-31更新;