
近年,擬人化エージェントがユーザインタフェースとして利用されたり,ペットロボットや掃除ロボットが一般家庭に普及するなど,エージェントやロボットが一般ユーザにとっても身近な存在になってきています.さらに,その役割も多様化し,エージェントやロボットが人間と協力して作業をしたり,人間同士のコミュニケーションを仲介するといった,人間社会をより豊かにする実用的なアプリケーションが生まれてきています.このような状況の中で,人間とエージェントやロボットが,どのように上手くつき合っていくのか,またそのためには,人間とエージェントとの間に,どのようなインタラクションを設計すればよいのかという新しい工学的課題が生まれています.

この課題に挑戦する研究開発領域であるHAI(Human-Agent Interaction)が,日本を中心に活発になってきています.過去6年間に開催されたHAIシンポジウムでは,延べ600名以上の参加者がこの新しい分野の研究について活発な議論を行いました.そして,今年開催するHAI-2012では,さらなる学術的な深化と産学間の交流をはかることを目指し,人工知能,ロボティクス,認知科学,社会心理学などの様々な分野におけるHAIの最先端の研究開発に関する発表を広く募集します.
本年は,討論セッションとポスターセッションを新設し,例年以上に活発でインタラクティブなシンポジウムにすることを目指します.また,新たに若手支援を行うことも予定しています.さらに,本年,HAIにおけるニーズを企業から提示し,来年,それに応える研究発表を行うという企画も検討中です.ご期待ください.
対象分野
HAIに関する理論的・実証的研究,各種応用システム開発事例などを広く募集します.たとえば,以下のようなテーマが該当しますが,これに限定されるものではありません.
- 人とインタラクションを行うエージェント/ロボットの設計・実現方法
- エージェント/ロボットを介した人間同士のコミュニケーション
- HAIにおける認知科学,社会心理学,発達心理学
- エージェントによるヒューマンインタフェース
- 人間とエージェント/ロボットの相互適応
- 適応・学習を可能にするインタラクションの設計
- エージェント/ロボットのアピアランス,表情,ジェスチャーの設計
- 人間とエージェントの関係性
- エージェント/ロボットの身体性
- インタラクションを可能にする知能の解明と実現
- インタラクションを通して生まれる知能の解明と実現
- 認知発達ロボティクス
- 記号創発ロボティクス
- HAIの要素技術
- ユーザ状態の推定/学習
- エージェントの適応/学習
- エージェントの音声合成/認識
- CMC(Computer Mediated Communication)環境における身体的なインタラクション
- HAIの応用事例 など
HAI-2011 Outstanding Research Award授賞者のお知らせ
2011年12月のHAIシンポジウム2011では,以下のいずれかの点で優れた発表に対して,Outstanding Research Awardを贈呈いたしました.
- HAI研究に対して新しい視点を与える研究である(研究の新規性)
- HAI研究に大きな影響を与えうる研究である(研究の影響力)
- HAI研究として完成度の高い研究である(研究の完成度)
プログラム実行委員会による審査の結果,下記の研究がOutstanding Research Awardに決定致しました.おめでとうございます.
- 最優秀賞:福田玄明,植田一博
- 1A-2-L 生物らしさの知覚に伴う脳活動 ー実際の生物とロボットを用いてー
- 優秀賞:高橋英之,岡田浩之,大森隆司
- 2B-2-L 「新奇性」と「親近性」の軸から子どもとロボットの関係性を捉える
- 優秀賞:寺田和憲,山田誠二,伊藤昭
- 2A-2-L ボーナス付きマッチングペニーゲームにおける人間からエージェント への適応プロセスの解明
- 優秀賞:小松孝徳,小林一樹,山田誠二,船越孝太郎,中野幹生
- 2A-3-L ユーザは言動不一致なシステムを許せるのか?:人間らしい表現とASEの表出がユーザに与える影響の調査